薬剤師として転職を考え始めたとき、
「病院と薬局では何が違う?」
「ドラッグストアはどんな仕事?」
「企業で働く薬剤師って何をしているの?」
と迷う人も多いと思います。
薬剤師の資格を活かせる職場は一つではありません。
病院、調剤薬局、ドラッグストア、企業では、仕事内容だけでなく、
- 患者との関わり方
- 勤務時間
- 身につく経験
- キャリア
- 求められる役割
も異なります。
大切なのは、
「どこが一番良いか」ではなく、「自分はどんな働き方を重視したいか」
で考えることです。
この記事では、薬剤師の代表的な4つの働き方を比較します。
まだ転職するかどうか自体を迷っている方は、先に「薬剤師は転職した方がいい?迷ったときに確認したいポイント」もあわせてご覧ください。
この記事でわかること
- 病院薬剤師の仕事内容と特徴
- 調剤薬局で働く薬剤師の特徴
- ドラッグストア薬剤師の仕事内容
- 企業で薬学知識を活かす働き方
- 4つの職場の違い
- 転職先を選ぶときに比較したいポイント
薬剤師の主な働き方を4つに分けて比較
薬剤師の代表的な働き方として、今回は次の4つを比較します。
- 病院
- 調剤薬局
- ドラッグストア
- 企業
ただし、同じ「病院」や「薬局」でも施設によって業務内容は異なります。
特に企業については、
「企業薬剤師」という1つの職種が存在するわけではありません。
研究、開発、薬事、安全性、品質保証、MRなど、仕事内容が大きく異なります。
そのためこの記事では、各職場の一般的な特徴を整理します。
病院薬剤師
主な仕事内容
病院薬剤師は、調剤だけでなく、入院患者の薬物療法に深く関わります。
主な業務には、
- 処方監査
- 調剤
- 注射薬調製
- 服薬指導
- 病棟業務
- 副作用・相互作用の確認
- 医師への処方提案
- 医薬品情報管理
- 医薬品安全管理
- チーム医療
などがあります。
病院によっては、がん、感染症、救急、緩和医療、栄養、周術期など、特定の領域に専門的に関わることもあります。
患者との関わり
病院薬剤師は、
治療中の患者の状態を見ながら薬物療法に関われる
ことが大きな特徴です。
入院中の患者では、
- 検査値
- 症状
- 副作用
- 他の治療
- 処方変更
などを確認しながら継続的に関わる場合があります。
また、医師、看護師、管理栄養士など、他職種と連携して治療を支援する機会も多くあります。
勤務時間・休日
病院によっては、
- 夜勤
- 当直
- 休日勤務
がある場合があります。
一方で、すべての病院薬剤師に夜勤や当直があるわけではありません。
勤務体制は病院ごとの差が大きいため、求人を確認するときは、
- 当直の有無
- 夜勤の有無
- 休日当番
- オンコール
- 残業
などを確認する必要があります。
身につきやすい経験
病院では、
- 臨床での薬物療法
- 疾患別の薬剤管理
- 検査値の確認
- 多職種連携
- 専門領域
などを深く経験しやすいのが特徴です。
日本病院薬剤師会でも、感染、がん、精神科、救急、周術期など、さまざまな専門領域に関する取り組みが行われています。
このような働き方を重視する人
病院は、
- 臨床を深く学びたい
- 入院患者の治療に関わりたい
- チーム医療に参加したい
- 疾患や薬物療法の専門性を高めたい
という働き方を重視する人が、詳しく調べてみる価値のある職場です。
調剤薬局
主な仕事内容
調剤薬局では、
- 処方監査
- 調剤
- 服薬指導
- 薬歴管理
- 疑義照会
- 相互作用・副作用確認
- 残薬確認
- 在宅訪問
- 医療機関との情報共有
などを行います。
近年は、処方箋を受け付けて薬を渡すだけではなく、
患者の薬物療法を継続して支援する役割
がより重要になっています。
患者との関わり
調剤薬局では、
地域の患者と長期間関われる
ことが特徴です。
同じ患者が数か月、数年と継続して来局することもあります。
そのため、
- 薬の変更
- 副作用
- 服薬状況
- 生活の変化
- 残薬
- 複数医療機関からの処方
などを長期的に確認できます。
在宅医療を行っている薬局では、患者の自宅や施設を訪問し、生活環境まで含めた服薬支援を行うこともあります。
勤務時間・休日
勤務時間は、薬局の営業時間や近隣医療機関の診療時間に大きく影響されます。
たとえば、
- 病院門前
- クリニック門前
- 面対応
- 在宅中心
などによって勤務実態は異なります。
そのため、
「調剤薬局なら土日休み」「薬局なら定時で帰れる」
と一律に考えないことが重要です。
求人を見るときは営業時間だけでなく、実際の勤務シフトや残業状況も確認しましょう。
身につきやすい経験
調剤薬局では、
- 外来患者の薬物療法
- 服薬支援
- 高齢者医療
- 多剤併用
- 在宅医療
- 地域連携
- 患者への説明
などを経験しやすいのが特徴です。
このような働き方を重視する人
調剤薬局は、
- 地域医療に関わりたい
- 同じ患者と継続して関わりたい
- 外来患者の服薬支援をしたい
- 在宅医療に興味がある
- 患者の生活背景まで含めて薬を考えたい
人が詳しく調べてみる価値のある職場です。
ドラッグストア
主な仕事内容
ドラッグストアでは、主に、
- OTC医薬品の相談
- 医薬品の販売
- 健康相談
- セルフメディケーション支援
などを行います。
調剤併設型の店舗では、これに加えて、
- 処方監査
- 調剤
- 服薬指導
- 薬歴管理
などの調剤業務も行います。
また、会社や店舗によっては、医薬品以外の商品販売や店舗運営に関わる場合があります。
調剤併設型とOTC中心型では仕事内容が違う
「ドラッグストア薬剤師」と一括りにしないことが重要です。
調剤併設型では、
処方箋調剤+OTC
の両方を経験する場合があります。
一方、OTC中心型では、
一般用医薬品や健康相談
が業務の中心になります。
転職先を検討するときは、
その店舗で薬剤師が実際に何を担当するのか
を確認しましょう。
患者・利用者との関わり
ドラッグストアでは、まだ医療機関を受診していない人から相談を受けることがあります。
たとえば、
- 風邪のような症状がある
- 胃が痛い
- 市販薬を選びたい
- 他の薬と一緒に飲めるか知りたい
- 病院を受診した方がよいか迷っている
といった相談です。
そのため、
セルフメディケーションの入口
で薬剤師として関われることが特徴です。
勤務時間・休日
ドラッグストアは店舗によって営業時間が長く、
- シフト勤務
- 土日祝勤務
- 遅い時間帯の勤務
がある場合があります。
ただし、会社・店舗による差が大きいため、勤務時間だけで判断せず、実際のシフトを確認する必要があります。
身につきやすい経験
ドラッグストアでは、
- OTC医薬品
- 健康相談
- セルフメディケーション
- 接客
- 店舗運営
- マネジメント
などを経験しやすいのが特徴です。
調剤併設店舗では、調剤とOTCの両方を経験できる可能性もあります。
このような働き方を重視する人
ドラッグストアは、
- OTC医薬品に強くなりたい
- 健康相談に対応したい
- 接客が好き
- 調剤以外の業務にも関わりたい
- 店舗運営やマネジメントにも興味がある
人が詳しく調べてみる価値のある職場です。
企業
「企業薬剤師」は1つの職種ではない
企業で働く場合に最も注意したいのは、
「企業薬剤師」という1種類の仕事があるわけではない
ということです。
製薬会社や関連企業には、
- 研究
- 臨床開発
- 薬事
- 安全性情報
- 品質保証
- 品質管理
- 学術
- MR
- メディカル関連職
など、さまざまな職種があります。
それぞれ仕事内容や求められる経験は大きく異なります。
研究・開発
研究職では、新しい医薬品候補の探索や評価など、新薬開発に関わります。
臨床開発では、治験や新薬の開発プロセスに関わる仕事があります。
薬事・安全性・品質
薬事では、医薬品の承認申請や規制への対応などに関わります。
安全性関連業務では、副作用情報等の収集・評価などを行います。
品質保証や品質管理では、医薬品が適切な品質で製造・管理されるための業務を行います。
MR
MRは、医師や薬剤師などの医療関係者に、
- 医薬品の有効性
- 安全性
- 使用上の注意
などの情報を提供・収集する仕事です。
なお、
MRになるために薬剤師免許が必須というわけではありません。
薬学知識や薬剤師としての経験が役立つ場合はありますが、
「薬剤師資格が必須の仕事」と「薬学知識を活かせる仕事」は分けて考える必要があります。
患者との関わり
企業では、病院、薬局、ドラッグストアと比較すると、患者と直接接する機会は少なくなる傾向があります。
一方で、
- 医薬品を開発する
- 安全性を評価する
- 品質を守る
- 医薬品情報を届ける
といった仕事を通じて、多くの患者の治療に間接的に関わります。
勤務時間・休日
企業の勤務形態は、会社や職種によって大きく異なります。
研究、MR、薬事、安全性などでは仕事の進め方も異なるため、
「企業なら土日休み」「企業なら残業が少ない」
などと一律には判断できません。
求人ごとの確認が必要です。
このような働き方を重視する人
企業は、
- 医薬品の研究や開発に興味がある
- データを扱う仕事が好き
- 文書作成や規制対応に興味がある
- 医薬品そのものに関わりたい
- 服薬指導以外のキャリアも検討したい
人が詳しく調べてみる価値のある選択肢です。
4つの働き方を一覧で比較
| 比較項目 | 病院 | 調剤薬局 | ドラッグストア | 企業 |
|---|---|---|---|---|
| 主な仕事 | 入院患者の薬物療法・調剤・病棟業務 | 調剤・服薬支援・在宅 | OTC・健康相談・調剤・店舗業務 | 研究・開発・薬事・安全性・MR等 |
| 患者との関わり | 治療中の患者に深く関わる | 地域患者と長期的に関わる | 健康相談・セルフメディケーション | 直接関わる機会は比較的少ない |
| 身につきやすい経験 | 臨床・疾患別薬物療法・チーム医療 | 外来・在宅・地域医療 | OTC・接客・店舗運営 | 職種ごとの専門性 |
| 夜勤・当直 | 施設によりあり | 薬局により異なる | シフト勤務の場合あり | 企業・職種による |
| 薬剤師免許 | 薬剤師業務では必須 | 必須 | 薬剤師業務では必須 | 職種により不要 |
| キャリアの特徴 | 専門領域を深めやすい | 地域・在宅・管理等 | OTC・管理・マネジメント | 選択肢が非常に多い |
この表はあくまで一般的な特徴です。
同じ職場区分でも、実際の仕事内容や勤務条件は施設・企業によって異なります。
年収は勤務先の名前だけでは決まらない
転職先を比較するとき、年収は重要な条件の一つです。
ただし、
「病院だから低い」「ドラッグストアだから高い」
と勤務先だけで判断するのはおすすめできません。
厚生労働省の調査では、病院薬剤師と薬局薬剤師の年代別年収に違いが見られる一方、年齢が上がると差が小さくなる年代もあります。
また、65歳までの累積年収を試算した資料では、病院と薬局で極端な差があるとは言い切れない結果も示されています。
さらに、
- 地域
- 経験年数
- 役職
- 勤務時間
- 雇用形態
- 手当
などによっても年収は変わります。
ドラッグストアや企業についても、職場や職種による差が大きいため、単純な平均値だけで比較しない方がよいでしょう。
年収については、別の記事で詳しく扱います。
転職先を選ぶときに比較したい5つのポイント
職場を比較するときは、まず次の5つを考えてみてください。
1.どんな仕事をしたいか
- 臨床を深めたい
- 在宅に関わりたい
- OTCを学びたい
- 医薬品開発に関わりたい
など、仕事内容から考えます。
2.患者とどのように関わりたいか
- 入院中の治療に深く関わりたい
- 地域の患者と長く関わりたい
- 健康相談に対応したい
- 患者と直接接しない仕事も検討したい
という違いがあります。
3.勤務時間・休日
仕事内容が魅力的でも、
- 夜勤
- 土日勤務
- シフト
- 通勤時間
などが自分の生活と合わなければ、長く続けにくいことがあります。
求人票だけでなく、実際の勤務体制まで確認しましょう。
4.年収・待遇
年収だけでなく、
- 昇給
- 賞与
- 手当
- 年間休日
- 有給休暇
- 福利厚生
なども含めて比較します。
5.将来どんな経験を身につけたいか
今の条件だけではなく、
3年後、5年後にどんな薬剤師になりたいか
も考えてみましょう。
同じ年収でも、身につけられる経験が違えば、将来の選択肢も変わります。
まとめ|「一番良い職場」ではなく、自分が重視する条件で選ぶ
薬剤師の働き方には、
- 病院
- 調剤薬局
- ドラッグストア
- 企業
など、さまざまな選択肢があります。
病院では臨床やチーム医療、
調剤薬局では地域医療や継続的な服薬支援、
ドラッグストアではOTCやセルフメディケーション、
企業では研究、開発、薬事など、
それぞれ異なる経験を積めます。
どの職場が一番良いかは、全員に共通する答えではありません。
大切なのは、
自分が仕事で何を重視したいのか
を明確にすることです。
まず、
- やりたい仕事内容
- 患者との関わり方
- 勤務時間・休日
- 年収・待遇
- 将来身につけたい経験
を整理してみてください。
そのうえで、自分が気になる職場を詳しく調べていくと、転職先を比較しやすくなります。
次は、
で、実際に転職活動を始める場合の進め方を確認していきます。
出典・参考資料
- 厚生労働省「医師・歯科医師・薬剤師統計」
- 厚生労働省 職業情報提供サイト job tag「薬剤師」
- 厚生労働省 職業情報提供サイト job tag「医薬情報担当者(MR)」
- 厚生労働省 職業情報提供サイト job tag「医薬品研究者」
- 日本病院薬剤師会「薬剤師の病棟業務の進め方 Ver.2.0」
- 日本病院薬剤師会 各種ガイドライン
- 厚生労働省 医薬品の販売制度に関する検討会
- 厚生労働省 薬剤師確保対策(病院薬剤師・薬局薬剤師の給与等に関する調査資料を含む)
- PMDA 採用情報
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