「今の職場、このままでいいのかな」
薬剤師として働いていると、給与、人間関係、勤務時間、仕事内容などをきっかけに、転職が頭をよぎることがあります。
一方で、仕事がつらいからといって、必ずしも転職が一番よい解決方法とは限りません。
大切なのは、
「転職するべきか」ではなく、「今困っていることを、どうすれば解決できるか」
という視点で考えることです。
この記事では、転職するか迷っている薬剤師が、今の状況を整理するためのポイントを解説します。
この記事でわかること
- 薬剤師が転職を考えるときに整理したいこと
- 転職を検討する一つのサイン
- 今の職場で改善できる可能性があるケース
- 転職前に決めておきたい条件
- 転職を決める前にできる情報収集
薬剤師は「辞めたい=転職」ではない
「仕事を辞めたい」と感じたとき、すぐに転職先を探したくなることもあると思います。
しかし、まず確認したいのは、
何が変われば、今の職場で働き続けられるのか
ということです。
厚生労働省の薬剤師を対象とした調査では、転職を希望する理由として、給与水準、職場の人間関係、業務内容・やりがい、勤務時間など、複数の要因が挙げられています。病院薬剤師と薬局薬剤師で傾向に違いはあるものの、「転職したい」という気持ちの背景が一つとは限らないことが分かります。
まずは「辞めたい」という気持ちを、そのまま転職という結論につなげず、
何に困っているのかを分解する
ところから始めてみましょう。
まず「辞めたい理由」を整理しよう
給与・待遇
- 給与が仕事量に見合っていない
- 昇給が期待できない
- 手当が少ない
- 他の薬剤師と比べて年収が低く感じる
ここで大切なのは、
「今の年収が低い」のか、「今後も上がる見込みがないことが問題なのか」
を分けることです。
同じ年収でも、昇給制度や役職、今後のキャリアによって判断は変わります。
人間関係
- 上司と合わない
- 同僚との関係が悪い
- 職場の雰囲気が合わない
- 相談できる人がいない
人間関係の問題は、転職で環境を変えることで解消する可能性があります。
一方で、特定の店舗や上司との問題であれば、異動などで解決できる場合もあります。
「会社そのものが合わない」のか、「今いる部署・店舗が合わない」のかを分けて考えてみましょう。
勤務時間・業務量
- 残業が多い
- 休みを取りにくい
- 人員不足で負担が大きい
- 勤務時間が生活と合わない
労働基準法上、時間外労働には原則として月45時間・年360時間という上限があります。特別な事情がある場合にも別途上限が設けられています。
ただし、法律上の上限以内であっても、自分の生活や体力に合っているとは限りません。
「違法かどうか」だけではなく、
この働き方を今後も続けたいと思えるか
で考えることも重要です。
仕事内容・やりがい
薬剤師といっても、職場によって仕事内容は大きく異なります。
たとえば、
- 調剤
- 服薬指導
- 在宅
- 病棟業務
- OTC販売
- 管理業務
- 教育
- 研究・開発
などがあります。
「薬剤師の仕事そのものが嫌なのか」「今の仕事内容が自分に合っていないだけなのか」は分けて考えてみましょう。
将来・キャリア
今は大きな不満がなくても、
「このまま5年後も同じ仕事をしているのかな」
と不安になることがあります。
たとえば、
- 在宅を経験したい
- 病院で臨床経験を積みたい
- 管理薬剤師になりたい
- 専門性を高めたい
- 企業で働いてみたい
など、今の職場では実現しにくい目標が明確になっている場合は、転職を考える理由の一つになります。
転職を検討する一つのサイン
「この条件なら必ず転職した方がいい」という基準はありません。
ただし、
今の職場の中では問題を解決するのが難しい
場合は、転職を選択肢に入れてもよいでしょう。
たとえば、
- 希望する仕事が現在の会社にはない
- 今後の昇給やキャリアがほとんど見込めない
- 異動などを相談しても解決できない
- 勤務条件の改善を相談しても状況が変わらない
- 長期的に続けたい働き方と会社の方針が大きく異なる
といったケースです。
ポイントは、
不満があるかどうかではなく、その不満を今の職場で解決できる可能性があるか
です。
今の職場で改善できる可能性があるケース
異動で解決できないか
店舗や部署、人間関係、仕事内容が原因なら、会社そのものを辞めなくても環境を変えられる可能性があります。
勤務条件を変更できないか
勤務時間、勤務日数、雇用形態などを変更できる会社もあります。
子育てや介護など、生活環境が変わったことで現在の働き方が合わなくなった場合は、まず利用できる制度を確認してみましょう。
やりたい業務に挑戦できないか
在宅、教育、採用、管理業務など、同じ会社の中にも別のキャリアが存在することがあります。
「今やっていない=この会社ではできない」とは限りません。
改善されたら残りたいか
ここはかなり重要です。
たとえば、
「給与が上がれば残りたい」
のであれば、問題は会社そのものではなく給与かもしれません。
一方で、
「給与が上がっても辞めたい」
のであれば、別の問題がある可能性があります。
転職する前に3つだけ決めよう
1.今の職場で困っていること
できるだけ具体的にします。
「仕事が嫌」
ではなく、
- 残業が多い
- 通勤時間が長い
- 年収を上げたい
- 在宅を経験したい
という形まで分解します。
2.何が変われば今の職場に残れるか
「ここが改善されたら残りたい」と思える条件を考えます。
何も思いつかない場合は、職場そのものを変えたい気持ちが強い可能性があります。
3.次の職場で譲れない条件
条件を増やしすぎると求人を選べなくなるため、まずは3つ程度に絞ってみましょう。
たとえば、
- 年収○万円以上
- 通勤30分以内
- 土曜日午後・日曜日休み
などです。
厚生労働省の「マイジョブ・カード」でも、自分の経験、強み、価値観や今後やりたいことを整理してキャリアプランを考える方法が用意されています。
転職を決めていなくても情報収集はできる
「求人を見たら転職しないといけない」
ということはありません。
むしろ、今の職場しか知らない状態では、現在の待遇が良いのか悪いのか判断しにくいことがあります。
厚生労働省は、仕事探しに役立つサービスとして、
- job tag:仕事内容や職業情報を調べる
- ハローワーク:実際の求人を調べる
- しょくばらぼ:企業の働き方や職場情報を比較する
という使い分けを紹介しています。
転職を決める前に、
「自分と同じ経験年数なら、どんな求人があるのか」
を見るだけでも判断材料になります。
求人を見るときは年収だけで判断しない
薬剤師の求人を見ると、どうしても年収に目が行きます。
厚生労働省のjob tagでは、薬剤師に対応する統計として、全国の年収566.8万円、有効求人倍率3.12などが掲載されています。
ただし、これらは全国統計であり、地域、経験年数、勤務先などによって条件は大きく異なります。
「平均より高い・低い」だけで転職を決めるのはおすすめできません。
求人を見るときは、
- 年収
- 昇給
- 賞与
- 残業
- 年間休日
- 有給休暇
- 通勤時間
- 転勤の有無
- 業務内容
- 教育制度
- 福利厚生
などをセットで比較しましょう。
厚生労働省の「しょくばらぼ」では、企業によっては月平均所定外労働時間や有給休暇取得状況、教育制度なども確認・比較できます。
求人票だけで決めず、最終的な労働条件を確認しよう
求人票に書かれている内容だけで判断しないことも重要です。
厚生労働省は、ハローワーク求人について、求人票の記載内容と実際の労働条件が異なる場合の相談窓口を設けています。
内定後には、
- 給与
- 勤務時間
- 休日
- 勤務地
- 業務内容
- 試用期間
- 各種手当
など、実際に提示された労働条件を確認したうえで判断しましょう。
「求人票では良さそうだったから」だけで決めないことが大切です。
5分でできる「転職するか整理するチェック」
| 質問 | 考えるポイント |
|---|---|
| 今困っていることを具体的に言える? | まず問題を整理する |
| その問題は今の会社で改善できそう? | 異動・制度変更なども検討 |
| 改善されたら今の職場に残りたい? | YESなら改善策も候補 |
| 改善されても辞めたい? | 他の職場を調べてみる |
| 次の職場で譲れない条件を3つ言える? | 求人比較の準備へ |
すべてを今すぐ決める必要はありません。
転職する・しないを決める前に、
「自分が何に困っていて、どうなれば解決するのか」
を整理することが最初の一歩です。
まとめ|「転職するか」より「今の問題をどう解決するか」で考える
仕事に不満を感じたとき、
転職するか、今の職場に残るか
という二択で考えてしまいがちです。
しかし、本当に考えたいのは、
今抱えている問題をどうすれば解決できるか
です。
まず、
- 今の職場で困っていることを整理する
- 今の会社で改善できるか確認する
- 次の職場に求める条件を決める
- 求人や他の職場を調べて比較する
という順番で考えてみてください。
その結果、
「今の会社で改善できそう」
という結論になることもあります。
反対に、
「今の職場では自分が求める働き方を実現できない」
と分かれば、転職を具体的に検討するタイミングです。
転職すること自体が目的ではありません。
自分が納得して働ける環境を探すことが目的です。
次に他の働き方を知りたい方は、
「病院・調剤薬局・ドラッグストア・企業|薬剤師の働き方を比較」
で、それぞれの働き方の違いを確認してみてください。
出典
- 厚生労働省「薬剤師確保のための調査・検討事業」
- 厚生労働省 職業情報提供サイト「job tag」薬剤師
- 厚生労働省「職場情報総合サイト しょくばらぼ」
- 厚生労働省「マイジョブ・カード」
- 厚生労働省「時間外労働の上限規制」
- 厚生労働省「求人票と実際の労働条件が異なる場合」